京都の税理士・中井康道税
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    国等に対して財産を寄付した場合の特例(その1)

    2012年4月1日

    以前に寄付をした場合の税額控除を見てきましたが、国等に対して財産を寄付した場合の課税関係を見ていきたいと思います。今回は、学校法人を設立するために資産を贈与した場合を見てみます。次回は、自治会への寄付を見ていく予定です。

    では、事例を挙げましょう。10数年前より個人で私立の幼稚園を経営している経営者Aさんがいます。このたび、この幼稚園を学校法人化することになり、Aさん所有の園舎とその敷地を法人設立のために寄付することになりました。この場合の課税関係はどうなるのかということです。

    法人に対して資産を贈与したときは、原則として、贈与したときの時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得が課税されます(所得税法59条)。ただし、民法34条の規定により設立された法人その他公益を目的とする事業を営む法人(学校法人、社会福祉法人、宗教法人等)に対する財産の贈与又は遺贈(法人を設立するためにする財産の提供を含みます。)で、これらの贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する場合において、国税庁長官の承認を受けたときは、所得税は非課税となります。

    所得税が非課税とされる国税庁長官の承認を受けるための要件としては、贈与等した資産が贈与等があった日以後2年以内に贈与等を受けた法人の公益を目的とする事業の用に使用されるとともに、法人に対して財産の贈与等をすることにより、贈与者及び贈与者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税もしくは贈与税等の負担を不当に減少させる(不当に減少させるかどうかの判定は、ここでは割愛いたします。)結果とならないことが必要です。また、国税庁長官の承認は、寄付者からの申請により行うこととされており、その申請書は寄付後4ヶ月以内に寄付者の住所地を管轄する税務署長に提出しなければなりません(寄付後4ヶ月以内に、所得税の確定申告書の提出期限が到来する場合には、その確定申告書の提出期限までとなります。)。

    以上見てきましたが、実務上提出する申請書類は多岐にわたり、かなりの数の提出書類となります。この特例に該当見込みで申請をお考えの方は、税務署の資産税職員か専門家である税理士の方にご相談するのが賢明かと思っています。

    直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税

    2012年3月31日

    今回は、直系尊属から住宅取得資金をもらった場合を見ていきます。制度のあらましとして、平成21年1月1日から平成23年12月31日までの間に父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた受贈者(もらった方)が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得資金を自己の居住の用に使用する家屋の新築又は取得をする時には、住宅取得資金の内一定金額について贈与税が非課税となります。

    受贈者の要件として、次の要件(代表的なものを例示しています)を満たす受贈者が非課税の対象となります。①贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫のこと)であること。なお、子や孫の配偶者は含まれません。②贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。③贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること。

    住宅取得資金の範囲として、住宅取得資金とは受贈者が自己の居住の用に使用する一定の家屋(※)を新築又は取得に充てるための金銭を言います。増改築も含まれますが、ここでは割愛いたします。

    ※一定の家屋とは、①家屋の床面積が50平方メートル以上であること。②購入する家屋が中古の場合、(ⅰ)耐火建築物(鉄筋等)の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。(ⅱ)耐火建築物以外(木造等)の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。ただし、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」により証明されたものについては、建築年数の制限はありません。③床面積の2分の1以上に相当する部分(商売の方を想定しています)が居住に使用されるものであること。

    非課税の金額は、平成23年分(※)の贈与(なお、平成21年分と22年分は割愛いたします)において、平成22年分で非課税の特例を適用していない場合は1000万円となります。

    ※平成24年税制改正があり、非課税金額は平成24年分は1000万円。平成25年分は700万円。平成26年分は500万円となります。なお、省エネ・耐震の住宅家屋は割愛させていただきます。

    手続きとしまして、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書に計算明細書、戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、受贈者の納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

    以上見てきましたが、この制度自体は自民党の麻生政権の緊急施策として決定しました。「祖父母」の要件を加えたことも意味があったと私は考えています。住宅取得資金の贈与の制度の変遷を見ると、550万円までは非課税制度(父母や祖父母からの要件で基礎控除110万円までの非課税を5年分先取る考え方です。平成17年12月31日を持ちまして廃止となりました。)がありました。この制度にあった祖父母を要件に取り入れるべきだとの意見を踏まえたのではないかと思っています。個人的見解を言うならば、この直系尊属からの住宅取得資金の非課税制度について、非課税額の金額自体に変動はあるかもしれませんが、延長方向で調整は続けられるのではないかと考えています。

    結局、上の世代が抱え込んでいる金融資産をいかに下の世代にスムーズに渡していくかということなのでしょうか

     

    住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算(訂正)

    2012年3月29日

    先日3月25日の上記掲載の件につきまして、訂正をさせて下さい。

    『非課税枠の1,000万円が平成24年分は1,000万円、平成25年分は700万円平成26年分は500万円。省エネ・耐震住宅は割愛させていただきます』と書きました。

    これは、次回説明いたします「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税」のことですが、住宅取得資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例の適用期限が平成26年12月31日までの贈与の3年延長になったことを申し添えいたします。お詫びとともに訂正に代えさせていただきます。

    小規模企業共済

    2012年3月29日

    こんにちは。確定申告も無事に終わりました。厳密には個人事業者の消費税は4月2日までですが、これは既に終えています。

    今年の所得税の確定申告で思ったのは、やはり年少扶養親族の扶養控除が無くなったこと。子ども手当とのバーターな訳ですが、子どもの居る世帯には確実に増税です。

    なら、どうすればよいかという事ですが、特殊な節税を狙うのではなく確実な手段がお勧めです。

    個人事業者の場合、お勧めなのが中小企業基盤整備機構の運営する小規模企業共済です。http://www.smrj.go.jp/skyosai/

    これは中小企業の経営者が退職金を積み立てる共済ですが、支払った掛け金が全額所得控除として認められます(ただし上限が年間84万円)。この点が民間の生命保険会社の個人年金などに比べて有利です。受け取る時も退職所得もしくは公的年金の雑所得になりますので、受け取る際にも税制上有利です。

    全額が控除になるという意味では国民年金も同じ。掛け金が社会保険料控除として全額が所得控除の対象になります。

    この点、『年金やら共済やら国が運営する制度なんかあてになるか』という批判はあると思います。特に若い世代は国民年金保険料を払っていない人が本当に多い。

    この点については次回に考えてみます。

    住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算

    2012年3月25日

    前回の関連で今回は、住宅取得資金の贈与を受けて相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算を具体例で見ていきたいと思います。平成23年に父から4,300万円、母から1,000万円の住宅取得資金の贈与を受け、いずれの贈与についても相続時精算課税を選択した場合を考えて見ましょう。

    相続時精算課税の特別控除額は、選択した贈与者(財産を渡した方)ごとにそれぞれ適用されます。平成23年中の住宅取得資金の贈与(合計所得金額が2,000万円以下である者が受ける贈与に限ります。)については1,000万円まで非課税とする特例がありますので、父からの贈与についてこの特例を初めて適用するものとします。

    (1)父からの贈与・・・課税される金額の計算としまして、4,300万円-1,000万円(非課税金額)-2,500万円(相続時精算課税の特別控除額)=800万円。贈与税額の計算としまして、800万円×20%(相続時精算課税に係る贈与税率)=160万円(贈与税額)。注意点としまして、相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税の基礎控除(110万円)は適用できません。

    (2)母からの贈与・・・課税される金額の計算としまして、1,000万円-1,000万円(相続時精算課税の特別控除額)=0。注意点としまして、住宅取得資金の非課税制度は受贈者(財産をもらった方)1人について1,000万円(※平成23年分に限る。)が限度となっていますので、父からの贈与について非課税制度を適用して1,000万円を非課税とした場合には、母からの贈与については非課税制度の適用を受けることはできません。ただし、母からの贈与の例で言いますと2,500万円の特別控除額は使えますので、2,500万円の枠から1,000万円を引いた残額1,500万円の特別控除額は翌年以降に繰り越して使えます。

    ※平成23年分の非課税枠は1,000万円ですが、平成24年分は1,000万円、平成25年分は700万円、平成26年分は500万円となります。なお、省エネ・耐震住宅の非課税枠はここでは割愛をさせていただきます。

    以上、計算例を見てきましたが、上記の父母2人からのそれぞれの贈与を受ける場合、父から1,000万円の全額を非課税枠として引ききった場合は、母からも二重に引かないよう注意が必要です。裏返して言えば、平成23年分について父から非課税枠500万円を引いて計算しているなら、残り500万円は母からも引いて計算できると言うことです。参考になさって下さい。