京都の税理士・中井康道税
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    申告漏れって脱税なの?

    2012年4月11日

    今回は小難しい話しは辞めて、実務経験の中で何人かの納税者から耳にした、「申告漏れ=脱税」と認識されている点について触れてみたいと思います。気楽に構えて下さいね。

    申告漏れとは、本来申告義務があるにもかかわらず意図的か否かは別にしまして、申告書をそもそも提出していないもしくは申告書は提出したが正しく記載されていないことです。すなわち、税務署である課税当局が調査や資料等からの把握により、申告漏れを指摘し、申告期限後に提出することです。

    では、脱税とはどういうことを指すのかですが、この定義づけも研究者等や書物等によってまちまちではあります。私個人的には中でも、課税要件の成立の事実を全部又は一部について故意を持って秘匿(隠す)し、課税を不法に免れる行為という定義づけがしっくりきて今もそのように理解しています。条文上も『隠ぺい・仮装』と表現されています。

    難しい表現を使ってしまいましたが、課税要件を満たしたために申告書は提出しているのですが、本来の課税されるべき金額を不法に免れて金額をことさら過少に申告しているというものです。

     

    国外財産を相続により取得する場合の相続税

    2012年4月8日

    今回も前回に引き続き、実務の中で実際にあった相談事例を紹介させていただきます。事例を見ましょう。

    相談者Aさんのお父様が平成19年5月に死亡しました。相続人はAさん、Aさんのお母様、Aさんのご長男(お父様と養子縁組をされています。)の3人です。Aさんのご長男は、平成18年9月頃からアメリカにある大学に2年間の留学中で、その間のご長男の生活費や教育費は、Aさんが日本から送金しています。お父様の相続財産の中にはハワイの別荘がありますが、これをご長男が相続する予定です。ご長男のように海外に住所を持つ者について、海外にある相続財産は課税されるのかという問題です。

    回答は、相続財産として課税されます。以下、その根拠を見ましょう。

    平成15年1月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得した者については、その相続財産を取得した時に、相続税法の施行地(日本)に住所を持つ者(「居住無制限納税義務者」といいます。)である場合、あるいは法施行地に住所を持たないが日本国籍を持っている者で、その者又は被相続人等がその相続開始前5年以内のいずれかの時において法施行地に住所を持っていたことがある場合(「非居住無制限納税義務者といいます。)には、相続した財産の全部が相続税の課税財産となり、相続した財産の所在が海外であっても課税の対象となります。また、法施行地に住所持たない者(「制限納税義務者」といいます。)である場合には、相続した財産の内、法施行地にあるもののみが課税財産となりますので、海外にある財産を相続しても相続税の課税財産とはなりません(相続税法1条の3、2条)。なお、日本の国籍を持っている者が、相続により財産を取得した時において、日本を離れている場合であっても、留学、国外出張、国外興行等により一時的に日本を離れているに過ぎない者については、その者の住所は日本にあることになります(相続税基本通達1の3・1の4共-6)。この点は注意が必要です。相談事例では、上記留学に該当しておりアメリカにある別荘については、相続財産として課税されることになります。

    平成15年時の改正前は、ご子息を留学させ国外に居住させる(一時的も含め)ことで相続税の租税回避が後を絶たず、改正に至りました。日本国籍を持っている子供が日本に住所を持っていない場合でも、被相続人が相続開始5年以内に日本に住所を持っている場合は、国外財産でも課税対象になりましたので、被相続人の要件までも法律でしばりを掛けた意義は大きいです。これによって、租税回避のスキームはまず壊滅されたといってよいでしょう。

    相続税と相続登記

    2012年4月7日

    今回は実務の中で実際にあった相談事例を紹介させていただきたいと思います。事例を見ましょう。

    相談者のお父様が昭和19年に死亡(私の場合の実際の相談は平成の死亡なのですが、今回は敢えて昭和19年と設定させていただきました。)した際に不動産の相続登記をしなかったため、現在も故人であるお父様名義のままとなっています。高齢者である長男と次男の2人で相続登記をしたいと思っています。この場合に相続税がかかるのかという問題です。

    相続税は相続や遺贈(遺言の場合)により取得した財産にかかりますが、相続税の申告がかかる人は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出しなければなりません(相続税法27条)。言い換えれば、相続登記の有無にかかわらず、取得した不動産は相続財産として申告する必要があります。相談事例において、不動産の相続登記をされても新たに相続税の課税関係が生じることはありません。しかし、相続の開始があった昭和19年当時は旧民法が施行されていましたので、長男が家督相続によってお父様の全財産を取得したことになります。長男が家督相続により名義を変更した後にその財産を弟(次男)の名義にすれば、長男から弟(次男)に贈与したことになりますので、弟に贈与税が課税されます。

    以上見てきましたように、相続登記をしていなかったものを権利関係を整理する意味で相続登記した場合は、相続税はかからないのですが、「昭和19年」死亡の際は旧民法が施行されていた関係で例外中の例外にあたります。この点は注意が必要だと頭の片隅に置いてもらえれば良いです。

    国等に対して財産を寄付した場合の特例(その2)

    2012年4月5日

    今回も前回に引き続き、寄付した際の課税関係を見ていきます。自治会への寄付をした場合を見ていきたいと思います。

    事例を挙げて説明しましょう。Aさんの所有する宅地200㎡(時価1,000万円相当)をAさんの住むB町の自治会に寄付しようと考えています。Aさんの今回の宅地の寄付について、譲渡所得は非課税になるのかどうかという問題です。

    地縁による団体というものがありまして、平成3年の地方自治法の改正により認められることとなりました、いわゆる町内会、自治会等が法人化したものです。従来、町内会、自治会等は人格のない社団としての地位しか認められませんでしたので、不動産を個人名義でしか登記できず、財産管理上の不便があり、これを解消するために法人化が認められたとされています(地方自治法260の2)。しかしながら、町内会、自治会等については、活動範囲が特定地域に限られていますので、B町自治会が法人化したといっても、租税特別措置法40条に規定する「公益を目的とする事業を営む法人」には該当しないことになります。

    以上見てきましたように、宅地を時価で譲渡したものとみなされて課税されますので、寄付の場合は注意が必要です。前回の学校法人を設立するために資産を寄付した場合のように原則は譲渡所得が課税されるが、公益を営む法人や公益の増進等に著しく寄与する場合などの要件に該当すれば例外的に申請を条件に非課税になる場合があることを押さえておいてもらうと良いです。

    経営セーフティ共済

    2012年4月1日

    こんにちは。今回は個人所得税の節税の話の続きです。

    前回は小規模企業共済の話をしましたが、同じ中小企業基盤整備機構(以下、機構)が運営する経営セーフティ共済の話をします。これはかつて倒産防止共済と言う名称であったことから分かるように、中小企業の倒産を防止するための共済です。

    簡単に言うと、中小企業が共済に掛け金を掛けて積立ます。例えば100万円積み立てたとしましょう。それで得意先が倒産して売掛金が回収できなかったとします。それでも外注先や仕入先には支払いを余儀なくされるのが一般的であり、いわゆる連鎖倒産が起こる危険性があります。その時に積み立てた金額の10倍まで無条件に貸付を受けられるという制度です(ただし金利は取られます、勿論)。

    この掛け金は損金処理できます。

    この話をすると、『あ~、うちは倒産するような得意先ないから関係ないや』と思う経営者は多いと思います。経営セーフティ共済は40か月以上積み立てると途中解約しても満額が返金されます(返金を受けた場合には益金になります)。つまり倒産による貸付を受けないで40カ月無事に経過すれば限りなく貯金に近い存在になります。それでいて掛け金を支出した段階で損金に落ちるため節税効果もバッチリです。

    勿論、解約して返戻を受ければ益金になりますが、赤字になった事業年度で解約すれば課税リスクも低減できます。

    節税は雑誌に載っているようなウルトラCを狙うよりも、既存の制度を利用して確実に行う方が安全・確実だと思います。

    『節税は良いけど脱税はアカン』昔から言われますが大切だと思います。