京都の税理士・中井康道税
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    京都の税理士中井康道の日常ブログ

    財務会計と税務会計

    2012年6月3日

    個人的に会計の中の「税務会計」に現在関心を持っています。財務会計と税務会計の扱う内容や違いを今回見ていきたいと思います。

    私達が普段、有価証券報告書等で目にする財務諸表は、財務会計の原則に基づいて作成されています。財務会計とは、投資家向けに適正な利益を計算することを目的とした会計です。

     一方、税務会計とは、企業が支払うべき税金を計算することを目的とした会計です。

    財務会計では、利益=収益-費用で計算しますが、税務会計では、課税所得=益金-損金で計算されます。利益と益金、費用と損金が同じものであれば特に問題はありませんが、実際にはそこに差異があります。その差異には、永久普遍に生じている永久差異と一時的に生じる一時差異があります。一時差異があると、企業の純利益が税効果によって大きくブレてしまいますので、税効果会計と呼ばれる処理をしてブレを修正することになります。

    以上見てきましたが、財務会計の理解に加えて税務会計の知識があると、株式などの投資の意思決定をする上で企業の実態を正確に把握することができると思います。例えば、会計方針の変更があった時に、変更がなかったと仮定して利益の推移を自分で計算するような場合にも考え方を知っておけばかなり役立つことと思います。上記以外の会計に投資の意思決定やコスト管理、収益管理などをする管理会計というものがありますが、機会があれば、この管理会計についても触れたいと思います。

    ストックオプション

    2012年6月2日

    今回はストックオプションを取り上げます。公認会計士を目指している友人がいまして、先日、昨年度の論文式試験の「租税法」の試験を見せてもらったところ、出題されていたのです。意味や仕組みについて見ていきたいと思います。

    ストックオプションとは、あらかじめ決められた価格で自社株を買う権利を言います。あらかじめ決められた価格が時価より安かった場合、この権利を与えられた者は利益を受けます。これによって、会社は取締役や使用人の意欲や士気を高め、一方で、会社は株価の値上がり益を通じて、取締役や使用人に将来の報酬を与えることができます。

    次に、仕組みを見ていきます。取締役や使用人に対して、一定の安い株価で自社の株式を購入する権利を与え、一定期間が経過した時点で、取締役や使用人が当初の約束の価額で株式を購入する。そして、株価が上った時点で売却すれば、その取締役や使用人に大きな利益が入り込んでくるという仕組みです。会社の業績向上による株価の上昇が、取締役や使用人の利益に直接結び付くことから、取締役や使用人の業績向上意欲に結び付くものと期待されています。

    (出典元 http://www.tabisland.ne.jp/explain/kabuhyok/stockop.htm)

    上記の場合、(1)A社の株価は1株500円。この時、A社は取締役甲に対し、今後X年以内なら1株600円でA社株を与えることを約束します。(権利付与) (2)甲氏はA社に対し、権利を行使して、この時のA社株の時価は1株1,500円ですが、A社からA社株を1株600円で〇〇株取得します。(権利行使)なお、A社が甲氏に与えたA社株(自己株式)は、かつてA社が1株500円で取得したものです。 (3)甲氏は株式市場に対して、A社株を1株2,000円で売却します。(株式売却)甲氏の利益は、1株1,400円になります。(2,000円-600円)

    会計士の租税法の試験に上図の利益を求める試験が出題されていましたが、税理士試験を受験する方にとってはそう難しい内容ではないと感じた印象です。会計を専門的に勉強された方には税法はやや独特のとっつきにくいのかもしれません。上図をイメージさえすれば、ストックオプションも理解しやすいと思います。

    生活保護制度

    2012年5月27日

    今回は生活保護制度を見ていきたいと思います。生活保護制度の趣旨は、資産や能力等全てを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としています。支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。以下、相談・申請窓口、生活保護を受けるための要件等、支給される保護費を説明します。保護の種類と内容や手続きの流れ、申請等に必要な書類はここでは割愛いたします。

    ①相談・申請窓口 現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は、市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。

    ②保護の要件等 生活保護は世帯単位で行い、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提です。また、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されます。

    ③支給される保護費 厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。収入としては、就労による収入、年金等社会保障給付、親族による援助等を認定します。

    以上見てきましたが、生活保護の金額と国民年金の金額の差が甚だしいと新聞等や周囲からもよく耳にします。私自身の考えでは、上記で触れた生活保護の制度の趣旨は困窮者に憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の保障」を守ることです。

    これに対して、国民年金は、主な加入者の自営業者等は勤め人のサラリーマンと違い、定年がないので年金を頼らずとも自営で稼得することができるとの意味合いで、いわゆる基礎年金部分だけとなり、報酬比例部分があるサラリーマン等の厚生年金とは金額の差が生じています。

    そもそも、制度の趣旨が異なっているということです。

    しかしながら、この点の不公平に関しての声が多いのは、生活保護の不正受給に徹底したメスを入れるべきだと私には思えてなりません。

    扶養義務

    2012年5月26日

    某芸人の母の生活保護受給で扶養義務をあらためまして考えたいと思います。今回は扶養義務、次回は生活保護を取り上げたいと思います。

    扶養義務とは、独立して生活できない方に対して、経済的に支援してあげなければならない義務のことをいいます。扶養されるべき方は、扶養義務を負っている者に対して、扶養義務に基づいて経済的援助をするように求めることができます。どのくらいの援助を求めることができるかは、扶養されるべき方と扶養義務者の収入等を勘案して、具体的に判断されることになるかと思います。

     また、扶養義務を負うのは、誰もが扶養義務を負うわけではありません。原則として、「直系血族(両親、祖父母、子、孫等)」と「兄弟姉妹(法律用語でけいていしまいと読みます。)」であり、特別な事情がある場合には、「3親等内の親族(血族、姻族も含め、1親等、2親等及び3親等の親族のことをいいます。)」も扶養義務を負う場合があります。

    ただし、3親等内の親族は、常に扶養義務を負うわけではありません。「直系血族」や「兄弟姉妹」の方に経済力がない場合など特別な場合のみ、家庭裁判所が、審判によって3親等内の親族を扶養義務者にすることができるとされています。

    今回大きく取り上げられたケースにおいて、扶養義務のあり方について考えさせられましたのが正直な思いです。今後の具体的議論により、どうあるべきなのか、進展を見守りたいです。

     

    個人への低額譲渡

    2012年5月13日

    前回は個人が法人への低額譲渡を見ましたが、今回は個人が個人への低額譲渡を見ていきます。事例を挙げて見ましょう。

    Aさんは所有する宅地を息子に、時価1億円するところ、4,000万円で譲渡しました。この場合の課税関係について見ていきます。

    回答は息子に6,000万円(1億円-4,000万円)を父Aさんから贈与により取得したものとみなされて贈与税がかかります(相続税法7条)。ただし、Aさんには4,000万円で譲渡していますので、譲渡益が生じる場合には所得税(譲渡所得)がかかります。

    前回の法人への低額譲渡を思い出していただきたいのですが、時価の2分の1未満で譲渡した際は、譲渡人の個人には時価額で譲渡したものとみなされ、譲受人の法人は法人税(受贈益)が課税されるといった、ダブル課税が生じました。今回の個人が個人に低額譲渡した場合は、時価の2分の1未満という制約はなく、相続税法上「著しく低い価額での財産の譲受けた場合」と規定しているのみです。では、著しく低い譲受け(譲渡人からすれば譲渡)の判断の目安がポイントとなります。この場合は、相続税評価の算定根拠となる相続税評価額を下回る取引は、著しく低い価額と税務当局から認定されることになります。過去に東京地裁だったと思いますが、この件の争点とする裁判がありました。納税者は「相続税評価額での取引は著しく低い価額ではない」とする主張が認められ、納税者の勝訴となりました。