京都の税理士・中井康道税
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    相続税の総額のあん分割合の計算方法

    2012年4月15日

    今回取り上げる内容は、相続税額を計算する際に、相続税の総額を各相続人の相続税額にあん分する割合の端数を切り上げや切り下げといった調整をして計算して良いものかという問題です。では、事例を挙げて見ましょう。

    夫が死亡して妻が3分の1、長男が3分の2を相続することになりましたが、相続税額を計算する過程において、相続税の総額を各相続人の相続税額にあん分する場合の割合を妻0.33、長男0.67とせず、妻0.34、長男0.66として申告をして差し支えないのかという問題です。回答としては、妻0.34、長男0.66として申告をしても良いことになります。このことは、通達(相続税法基本通達17-1)の取り扱いが下記のとおり、あります。

    小数点以下2位未満の端数がある場合において、その財産の取得者全員が選択した方法により、各取得者の割合の合計値が1になるようその端数を調整して、各取得者の相続税額を計算されているときは、その計算でも差し支えないものとして取り扱っています。

    このように見てきますと、上記の例で長男は納税者有利となり、妻は結果的に納税者有利とはなっていませんが、ひとえに計算の便宜上の措置を取っているものだと考えられます。

    国外財産を相続により取得する場合の相続税

    2012年4月8日

    今回も前回に引き続き、実務の中で実際にあった相談事例を紹介させていただきます。事例を見ましょう。

    相談者Aさんのお父様が平成19年5月に死亡しました。相続人はAさん、Aさんのお母様、Aさんのご長男(お父様と養子縁組をされています。)の3人です。Aさんのご長男は、平成18年9月頃からアメリカにある大学に2年間の留学中で、その間のご長男の生活費や教育費は、Aさんが日本から送金しています。お父様の相続財産の中にはハワイの別荘がありますが、これをご長男が相続する予定です。ご長男のように海外に住所を持つ者について、海外にある相続財産は課税されるのかという問題です。

    回答は、相続財産として課税されます。以下、その根拠を見ましょう。

    平成15年1月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得した者については、その相続財産を取得した時に、相続税法の施行地(日本)に住所を持つ者(「居住無制限納税義務者」といいます。)である場合、あるいは法施行地に住所を持たないが日本国籍を持っている者で、その者又は被相続人等がその相続開始前5年以内のいずれかの時において法施行地に住所を持っていたことがある場合(「非居住無制限納税義務者といいます。)には、相続した財産の全部が相続税の課税財産となり、相続した財産の所在が海外であっても課税の対象となります。また、法施行地に住所持たない者(「制限納税義務者」といいます。)である場合には、相続した財産の内、法施行地にあるもののみが課税財産となりますので、海外にある財産を相続しても相続税の課税財産とはなりません(相続税法1条の3、2条)。なお、日本の国籍を持っている者が、相続により財産を取得した時において、日本を離れている場合であっても、留学、国外出張、国外興行等により一時的に日本を離れているに過ぎない者については、その者の住所は日本にあることになります(相続税基本通達1の3・1の4共-6)。この点は注意が必要です。相談事例では、上記留学に該当しておりアメリカにある別荘については、相続財産として課税されることになります。

    平成15年時の改正前は、ご子息を留学させ国外に居住させる(一時的も含め)ことで相続税の租税回避が後を絶たず、改正に至りました。日本国籍を持っている子供が日本に住所を持っていない場合でも、被相続人が相続開始5年以内に日本に住所を持っている場合は、国外財産でも課税対象になりましたので、被相続人の要件までも法律でしばりを掛けた意義は大きいです。これによって、租税回避のスキームはまず壊滅されたといってよいでしょう。

    相続税と相続登記

    2012年4月7日

    今回は実務の中で実際にあった相談事例を紹介させていただきたいと思います。事例を見ましょう。

    相談者のお父様が昭和19年に死亡(私の場合の実際の相談は平成の死亡なのですが、今回は敢えて昭和19年と設定させていただきました。)した際に不動産の相続登記をしなかったため、現在も故人であるお父様名義のままとなっています。高齢者である長男と次男の2人で相続登記をしたいと思っています。この場合に相続税がかかるのかという問題です。

    相続税は相続や遺贈(遺言の場合)により取得した財産にかかりますが、相続税の申告がかかる人は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出しなければなりません(相続税法27条)。言い換えれば、相続登記の有無にかかわらず、取得した不動産は相続財産として申告する必要があります。相談事例において、不動産の相続登記をされても新たに相続税の課税関係が生じることはありません。しかし、相続の開始があった昭和19年当時は旧民法が施行されていましたので、長男が家督相続によってお父様の全財産を取得したことになります。長男が家督相続により名義を変更した後にその財産を弟(次男)の名義にすれば、長男から弟(次男)に贈与したことになりますので、弟に贈与税が課税されます。

    以上見てきましたように、相続登記をしていなかったものを権利関係を整理する意味で相続登記した場合は、相続税はかからないのですが、「昭和19年」死亡の際は旧民法が施行されていた関係で例外中の例外にあたります。この点は注意が必要だと頭の片隅に置いてもらえれば良いです。

    代襲相続

    2012年2月18日

    今回は、代襲(だいしゅうと呼びます。)相続を見ていきます。「代襲」とものものしい言葉を使っていますが、構えて頂くことは何らありませんので、見ていきますね。

    代襲相続とは、被相続人(亡くなった方)に子供がいたのですが、その子供さんが被相続人より先に死亡していたりして相続できない場合などに、その子供さんの子供(被相続人から見れば、孫にあたります。)が相続する権利があるとする制度のことです(民法887条第2項第3項)。また、お子さんがいない夫妻の場合、ケースにより甥や姪まで相続できる制度です(民法889条第2項)。

    事例を示しながら、説明をします。①例えば、80歳で亡くなられた方がいて、残された家族は妻だけで、子供はいなかったとします。遺言書もありませんでした。妻は自分だけが相続できるものと思い、遺産である土地建物の登記相談に法務局へ行きました。②ところが、法務局職員から言われたことに妻は、驚きました。何故かと言いますと、亡くなった夫の兄弟姉妹を戸籍から確認は必要だが、生存している可能性と、仮に兄弟等が亡くなっていたとしても、その兄弟等の子供たちがいれば、その子供たちまで相続の権利があると言われたからです。③この場合、妻は相続財産全体の4分の3の権利があるとするのが、民法の考え方です。それ以上の権利をもらいたい場合はどうすれば良いかと言いますと、遺産分割協議が必要となってきます。

    このように見ていきますと、子供さんのいない夫婦には、遺言書がメリットある制度で活用すべきかもしれません。そうすれば、兄弟姉妹には前回学習した「遺留分」自体がありませんから、全て妻が相続できることになります。

    法定相続人

    2012年2月5日

    相続税についても少しづつ話していきたいと思います。

    相続税は死亡された人(被相続人)の相続財産について課税され、相続した人(相続人)が納税義務を負う事になります。

    民法では、相続する権利を持つ人のことを法定相続人と規定しています。よく話しの流れで「相続人は何人いますか。」という言い方も耳にしますが、「法定相続人」を指していることになります。死亡した方を「被相続人」と呼びますが、亡くなったからといって、肉親なら誰でも相続人にはなれません。もし、遺言(ゆいごん。法律用語では、いごんとも言います。)があれば、遺言に名前を明記された方が相続人になります。遺言に「愛人」(愛人のことは通常特殊関係人と呼びます。)が指名され、もめごととなるケースがありますが、遺言は故人の意志を尊重する建て前から、愛人すなわち特殊関係人も遺言だと相続人になれるわけです。一方、遺言がない場合は、法律に基づいて相続人が決まります。

    次回は、相続人の範囲の一般的なケースを見ていくことにします。