京都の税理士・中井康道税
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    ジャンル別記事/相続税

    遺産分割協議書(その2)

    2012年7月29日

    前回に続き、遺産分割協議書について見ていきます。被相続人Aさんの相続人は、妻と子供2人の計3人とします。今回の事例は、3人で協議した結果、妻が遺産を全部取得することになり、子供2人は相続放棄した場合です。相続放棄は、家庭裁判所への申述(今回は家庭裁判所への相続放棄の方法については、割愛いたします。)によらずに、書面で2人とも相続放棄すると交わした場面を考えて見ます。

    上記事実関係を踏まえて、後日有価証券(株式)が時価に換算して1,000万円相当が漏れていたことが判明します。既に子供は2人とも相続放棄していますので、妻が有価証券(株式)を相続できるのかという問題です。答えは、子供2人にも改めて遺産の分割協議できる権利が出てきます。ここでのポイントは、家庭裁判所への申述による相続放棄ではなく、書面で交わしていることです。書面で交わしている以上、表に出ている遺産分割協議書の遺産内容では相続放棄したものの、後日遺産が出てくれば、話しは別だということです。
    話し合いのテーブルに付けるということなのです。逆に、家庭裁判所へ相続放棄していた場合は、後日遺産が出てきても協議できる権利はないことになります。相続開始に遡り、放棄する意思表示を取ったことになります。

    実際のところ、相続放棄の場合、家庭裁判所へ手続きを踏むか、書面で交わすか、どちらが主流なのかは分かりません。家庭裁判所へ手続きを踏む方法があることは知っていても、実際相続の場面では、時間の面や煩雑さ等の理由から書面で交わすケースが多いのではないかと個人的には思っています。是非参考になさって下さい。

    遺産分割協議書(その1)

    2012年7月28日

    当事務所スタッフのヨシです。今回は、相続税の申告書に添付する書類の一つである遺産分割協議書を取り上げたいと思います。遺産分割協議書の様式や記載方法等に触れるのではなく、若干ながら法的な問題にも波及する内容を見てみたいと思います。次回も同様の関連事項に触れる予定です。

    例えば、被相続人Aさんの相続人が配偶者と子供2人の計3人いたとします。3人で遺産分割の協議をする際に、遺産分割協議書に「後日新たな財産が発覚して出てきた場合、配偶者がその財産を取得するものとする。」と一文を記載したケースを考えて見ます。上記で言うところの新たな財産は例えば、有価証券(株式)だと考えて下さい。税務上は、遺産分割協議書でどの財産を誰が取得するかの特定をしていますので、この一文の有り無しで影響は全くありません。法的にはどうかと言いますと、今表に出ている財産については協議できているので問題はないのですが、新たな財産が出てきた場合は、改めて相続人間で協議する権利が出てきます。結論から言いますと、遺産分割協議書に上記内容の文言を記載したところで、意味がないことになります。

    私の実務経験から上記のケースを1件見たことはあります。もし、敢えて記載するのであれば、「後日新たな財産が判明して出てきた場合は、相続人間で改めて協議をすることとする。」と記載すれば良いと思います。あるいは、このような文言自体を最初から記載しないか、どちらかにされるのがよろしいでしょうね。

    相続税の申告書への押印は実印なの?

    2012年7月22日

    今回も相続税に関連した内容を見ていきます。自書あるいは税理士に依頼した申告書がいよいよ完成し、申告書に押印する最後の段階に辿り着きました。この場合の印鑑は、実印を押印する必要があるのかということです。通常、役所への申請書類に押印となれば、認印を押印することになりますが、特に税務署へ提出する相続税の申告書に限って、実印にすべきかどうか、迷われるのもごもっともなことなのです。

     その理由は、相続税の申告書の添付書類の一つに、遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書を提出することになっており、その使用した実印を申告書に押印する必要があるのではないかと思われたからだと思います。答えは実印を押印してもらう必要はなく、認印で結構です。認印を押印してもらう意味に2つの意味合いがあります。一つは、申告書を提出する意思表示を表明することと、もう一つは、算出された税額(ゼロの税額を含みます。)を納得の上承認することです。以上から、印鑑の種類は一切関係なく、認印で上記2つの意味合いを納税者が理解して押印することになります。

    どうでしょうか。もやもやされていた押印の件、ご理解いただけたでしょうか。実印を押印されても全く問題はありませんが、実印はやはり、実印で押印すべき場合にのみ押印願いたいと個人的に思っています。

    相続財産となる既経過利子

    2012年7月16日

    前回に続き、相続財産として見落としやすい既経過利子(利息)を見ていきます。定期預金を相続した場合と考えて下さい定期預金の元本は表に出ていますが、利息がついつい漏れやすいという問題です。

    利息について申し上げれば、バブルの時期とは異なり、定期預金にしたところでわずかばかりの利息です。タンス預金よりはマシなところでしょうか。相続財産として課税される定期預金の価額は、課税時期(亡くなった日現在)における預け入れ額と同時期現在において解約した場合に既経過利子の額として支払いを受けることができる金額から、当該金額につき源泉徴収されるべき所得税等の額に相当する金額(この源泉徴収の用語につきましては、今回は割愛いたします。機会を改めまして触れたいと思います。)を控除した金額との合計額によって評価することになっています(財産評価基本通達203)。この利息額は預け入れ日から相続日までの間の利息をご自分で計算してもらえば良いのですが、取引している金融機関の担当者に確認してもらうことも可能です。すぐに教えてくれますので。例えば、ゆうちょ銀行の定額貯金の場合の利息計算は、複利で計算することになり、ご自分で計算となるとかなり複雑な計算になるので、取引金融機関で確認されるのが良いかと思います。

    以上見てきましたが、意外に落とし穴ですので、ご留意願います。なお、各種預貯金のうち定期預金、定期郵便貯金及び定額郵便貯金以外の預貯金について、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限って、課税時期現在の預け入れ額のみによって評価します(上記の基本通達)。

    小規模宅地の特例

    2012年4月22日

    今回は相続税の評価上、減額できる特例制度の小規模宅地の特例を見ていきます。

    小規模宅地の特例とは、相続や遺贈によって土地を取得した場合に、その土地の中に被相続人が自宅として住んでいたり、事業に使用していた小規模な宅地又は、国の事業に使用していた小規模な宅地があったときは、その土地が被相続人の生活の基盤になっていたことなどに配慮して、宅地の評価額の一定割合を減額できる制度のことです。

    特例の対象となる宅地とは、次の全ての要件に当てはまる宅地をいいます。①相続開始の直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用又は居住の用に使用されていた宅地等であること②建物や構築物(駐車場のアスファルト舗装、看板、塀などのこと)の敷地の用に使用されていたこと③販売用の資産でないこと④一定の限度面積までの部分であること⑤相続税の申告の提出期限までに遺産分割されていること。なお、遺産が申告期限までに分割されていない場合には、他の要件を満たしていても、適用を受けることはできません。申告期限までに遺産分割が間に合わなかった場合には、一旦小規模宅地の評価減を適用しないで納税と申告を済ませておきます。その後、申告期限から3年以内に遺産分割協議が整ったときは、その日の翌日から4ヶ月以内に限り、更正の請求という手続きによって、税金を返してもらうことができます。

    評価の減額割合(平成22年4月1日以後の相続)は宅地の種類によって異なります。①特定事業用宅地等(※1) 400㎡まで80%減額(評価額の20%を計上すれば良い)②特定居住用宅地等(※1) 240㎡まで80%減額③ ①と②以外の小規模宅地等(※2) 200㎡まで50%減額(評価額の50%計上すれば良い)

    ※1 特定事業用宅地等と特定居住用宅地等の制度や要件等は割愛いたします。※2 不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業などは含まれます。

    特定を受けるためには、相続税の申告書(申告書第11表の付表1、付表2)に、この特例を受ける旨を記載し、計算に関する明細書、その他一定の書類を添付する必要があります。

    以上見てきましたが、相続税のかかるような納税者の方は、持ち家を持っている方は多いと思います。上記の特定居住用宅地等に当てはまらなかった場合でも、上記の特例対象宅地に該当又は分割ができていれば、最低限200㎡までの50%の減額は認められるので評価上恩典のある特例です。この特例は存続していくものだと考えております。