京都の税理士・中井康道税
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    ジャンル別記事/相続税

    借地権と底地

    2012年4月21日

    今回は、売却や相続それに贈与の対象となる、よく見聞きする借地権と底地(そこち)について見ていきたいと思います。

    借地権とは、借地借家(しゃくち・しゃっか)法(従前は借地法と呼ばれていましたが、これも含みます。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいいます。つまり、建物の所有を目的とする、賃借権等に基づく敷地利用権のことです。この場合の建物と敷地利用権を合わせたものが借地権付き建物です。ほとんどの借地権は、賃貸借契約に基づく債権です。借地権は債権でありながら、所有権等の物権と同様に売買・相続・贈与の対象とすることができます。

    次に、底地とは、宅地について借地権の付着している場合における宅地の所有権をいいます。借地権と底地は、コーヒーカップとお皿の関係に例えられます。両者は一体となってその価値を形成する一方で、前者は単独でも敷地利用という機能を果たしますが、後者はそれだけでは機能をほとんど発揮できないからです。ちなみに、「底地権」という用語は慣行的に使われているようでもありますが、専門に仕事に従事されている職業人は底地権とは使用しない用語です。

    以上見てきましたが、もともとは戦後土地が空いていた所に、土地所有者に頼んで借地権者が土地を借り、地代を払い家を建てさせてもらいました。時を経てこの借地権の権利が高いものとなりました。地主と借地権者双方びっくり驚いているのです。

    同じ土地に権利を有する地主と借地権者に関しては、借地権者が強く保護されています。住まいということが人の生活における基盤でありそれを保護するというのが趣旨なのでしょうか

     

     

    相続税の総額のあん分割合の計算方法

    2012年4月15日

    今回取り上げる内容は、相続税額を計算する際に、相続税の総額を各相続人の相続税額にあん分する割合の端数を切り上げや切り下げといった調整をして計算して良いものかという問題です。では、事例を挙げて見ましょう。

    夫が死亡して妻が3分の1、長男が3分の2を相続することになりましたが、相続税額を計算する過程において、相続税の総額を各相続人の相続税額にあん分する場合の割合を妻0.33、長男0.67とせず、妻0.34、長男0.66として申告をして差し支えないのかという問題です。回答としては、妻0.34、長男0.66として申告をしても良いことになります。このことは、通達(相続税法基本通達17-1)の取り扱いが下記のとおり、あります。

    小数点以下2位未満の端数がある場合において、その財産の取得者全員が選択した方法により、各取得者の割合の合計値が1になるようその端数を調整して、各取得者の相続税額を計算されているときは、その計算でも差し支えないものとして取り扱っています。

    このように見てきますと、上記の例で長男は納税者有利となり、妻は結果的に納税者有利とはなっていませんが、ひとえに計算の便宜上の措置を取っているものだと考えられます。

    財産の分割の協議に関する書類

    2012年4月14日

    今回は、相続税の申告書に添付することとされている「財産の分割の協議に関する書類」、「その他の財産の取得の状況を証する書類」とはどんな書類をいうのか、見ていきたいと思います。

    「財産の分割の協議に関する書類」とは、共同相続人又は包括受遺者(遺言者の財産を特定することなく、その全部又は一部を受ける特定の者のことです。)が、相続又は遺贈に係る財産の分割について協議した事項を記載した書類です。その書式は特に定まっているわけではありませんが、その書類にその相続に関する全ての共同相続人又は包括受遺者が自署し、これらの者の住所地の市区町村長の印鑑証明とその証明を得た印を押して作成された書類をいいます。また、相続人のうちに未成年者がいる場合には、その未成年については、家庭裁判所で特別代理人の選任を受けて、その特別代理人が未成年者に代わって遺産の分割協議を行います。その者が自署し、その者の住所地の市区町村長の印鑑証明を得た印を押している書類をいいます(日本に住所がない者の場合は、公証人役場の認証をもって印鑑証明書に代えることができます。)。

    「その他の財産の取得の状況を証する書類」とは、その財産が調停又は審判により分割されているものである場合は、その調停の調書又は審判書の謄本をいい、その財産が法の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされた財産である場合(生命保険金、死亡退職金など)には、その財産の支払通知書等その財産の取得を証する書類をいいます。

    以上見てきましたとおり、法では、財産の分割協議に関する書類等という表現のように漠然としか記載されていない関係で、わかりづらいと思いますが、具体的に上記のように挙げました。参考にしていただければ幸いです。

    国外財産を相続により取得する場合の相続税

    2012年4月8日

    今回も前回に引き続き、実務の中で実際にあった相談事例を紹介させていただきます。事例を見ましょう。

    相談者Aさんのお父様が平成19年5月に死亡しました。相続人はAさん、Aさんのお母様、Aさんのご長男(お父様と養子縁組をされています。)の3人です。Aさんのご長男は、平成18年9月頃からアメリカにある大学に2年間の留学中で、その間のご長男の生活費や教育費は、Aさんが日本から送金しています。お父様の相続財産の中にはハワイの別荘がありますが、これをご長男が相続する予定です。ご長男のように海外に住所を持つ者について、海外にある相続財産は課税されるのかという問題です。

    回答は、相続財産として課税されます。以下、その根拠を見ましょう。

    平成15年1月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得した者については、その相続財産を取得した時に、相続税法の施行地(日本)に住所を持つ者(「居住無制限納税義務者」といいます。)である場合、あるいは法施行地に住所を持たないが日本国籍を持っている者で、その者又は被相続人等がその相続開始前5年以内のいずれかの時において法施行地に住所を持っていたことがある場合(「非居住無制限納税義務者といいます。)には、相続した財産の全部が相続税の課税財産となり、相続した財産の所在が海外であっても課税の対象となります。また、法施行地に住所持たない者(「制限納税義務者」といいます。)である場合には、相続した財産の内、法施行地にあるもののみが課税財産となりますので、海外にある財産を相続しても相続税の課税財産とはなりません(相続税法1条の3、2条)。なお、日本の国籍を持っている者が、相続により財産を取得した時において、日本を離れている場合であっても、留学、国外出張、国外興行等により一時的に日本を離れているに過ぎない者については、その者の住所は日本にあることになります(相続税基本通達1の3・1の4共-6)。この点は注意が必要です。相談事例では、上記留学に該当しておりアメリカにある別荘については、相続財産として課税されることになります。

    平成15年時の改正前は、ご子息を留学させ国外に居住させる(一時的も含め)ことで相続税の租税回避が後を絶たず、改正に至りました。日本国籍を持っている子供が日本に住所を持っていない場合でも、被相続人が相続開始5年以内に日本に住所を持っている場合は、国外財産でも課税対象になりましたので、被相続人の要件までも法律でしばりを掛けた意義は大きいです。これによって、租税回避のスキームはまず壊滅されたといってよいでしょう。

    相続税と相続登記

    2012年4月7日

    今回は実務の中で実際にあった相談事例を紹介させていただきたいと思います。事例を見ましょう。

    相談者のお父様が昭和19年に死亡(私の場合の実際の相談は平成の死亡なのですが、今回は敢えて昭和19年と設定させていただきました。)した際に不動産の相続登記をしなかったため、現在も故人であるお父様名義のままとなっています。高齢者である長男と次男の2人で相続登記をしたいと思っています。この場合に相続税がかかるのかという問題です。

    相続税は相続や遺贈(遺言の場合)により取得した財産にかかりますが、相続税の申告がかかる人は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出しなければなりません(相続税法27条)。言い換えれば、相続登記の有無にかかわらず、取得した不動産は相続財産として申告する必要があります。相談事例において、不動産の相続登記をされても新たに相続税の課税関係が生じることはありません。しかし、相続の開始があった昭和19年当時は旧民法が施行されていましたので、長男が家督相続によってお父様の全財産を取得したことになります。長男が家督相続により名義を変更した後にその財産を弟(次男)の名義にすれば、長男から弟(次男)に贈与したことになりますので、弟に贈与税が課税されます。

    以上見てきましたように、相続登記をしていなかったものを権利関係を整理する意味で相続登記した場合は、相続税はかからないのですが、「昭和19年」死亡の際は旧民法が施行されていた関係で例外中の例外にあたります。この点は注意が必要だと頭の片隅に置いてもらえれば良いです。