京都の税理士・中井康道税
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    ジャンル別記事/贈与税

    贈与税

    2012年8月19日

    今回は贈与税について見ていきたいと思います。贈与税とは、財産の贈与を受けた者が、贈与のあった年の1月1日から12月31日までの1年間に譲り受けた財産の金額に対して課税される税金です。贈与税の対象となる財産には、通常皆さんが思い浮かぶようなお金や不動産以外にも以下のようなものなどがあります。
     1 生命保険金(保険金の受取人以外の人が保険料を負担していた場合。例:父親が、受取人となっている私の生命保険の掛金を支払ってくれている場合。)

     2 低額譲渡(著しく低い価格で財産の譲り渡しが行われた場合。例:1カラットのダイヤモンドリングを1,000円で譲り受けた場合。)

     3 債務免除等(対価を支払わず、あるいは著しく低い価格で債務免除を受けた場合。例:親から借りた住宅購入資金の返済免除を受けた場合。)

     4 定期金(定期金の受取人以外の人が掛金を負担していた場合。)

     なお、贈与税には上記のような課税される対象以外に課税されない財産(非課税財産)もあります。この点についての説明は、改めてしたいと思います。贈与税は、相続税の補完税とも言われており、贈与は相続対策にも有効な手段と言えます。なぜ、相続税の補完税と言われる理由についても同様に機会を改めて説明したいと思います。

    個人への低額譲渡

    2012年5月13日

    前回は個人が法人への低額譲渡を見ましたが、今回は個人が個人への低額譲渡を見ていきます。事例を挙げて見ましょう。

    Aさんは所有する宅地を息子に、時価1億円するところ、4,000万円で譲渡しました。この場合の課税関係について見ていきます。

    回答は息子に6,000万円(1億円-4,000万円)を父Aさんから贈与により取得したものとみなされて贈与税がかかります(相続税法7条)。ただし、Aさんには4,000万円で譲渡していますので、譲渡益が生じる場合には所得税(譲渡所得)がかかります。

    前回の法人への低額譲渡を思い出していただきたいのですが、時価の2分の1未満で譲渡した際は、譲渡人の個人には時価額で譲渡したものとみなされ、譲受人の法人は法人税(受贈益)が課税されるといった、ダブル課税が生じました。今回の個人が個人に低額譲渡した場合は、時価の2分の1未満という制約はなく、相続税法上「著しく低い価額での財産の譲受けた場合」と規定しているのみです。では、著しく低い譲受け(譲渡人からすれば譲渡)の判断の目安がポイントとなります。この場合は、相続税評価の算定根拠となる相続税評価額を下回る取引は、著しく低い価額と税務当局から認定されることになります。過去に東京地裁だったと思いますが、この件の争点とする裁判がありました。納税者は「相続税評価額での取引は著しく低い価額ではない」とする主張が認められ、納税者の勝訴となりました。

     

    直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税

    2012年3月31日

    今回は、直系尊属から住宅取得資金をもらった場合を見ていきます。制度のあらましとして、平成21年1月1日から平成23年12月31日までの間に父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた受贈者(もらった方)が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得資金を自己の居住の用に使用する家屋の新築又は取得をする時には、住宅取得資金の内一定金額について贈与税が非課税となります。

    受贈者の要件として、次の要件(代表的なものを例示しています)を満たす受贈者が非課税の対象となります。①贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫のこと)であること。なお、子や孫の配偶者は含まれません。②贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。③贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること。

    住宅取得資金の範囲として、住宅取得資金とは受贈者が自己の居住の用に使用する一定の家屋(※)を新築又は取得に充てるための金銭を言います。増改築も含まれますが、ここでは割愛いたします。

    ※一定の家屋とは、①家屋の床面積が50平方メートル以上であること。②購入する家屋が中古の場合、(ⅰ)耐火建築物(鉄筋等)の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。(ⅱ)耐火建築物以外(木造等)の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。ただし、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」により証明されたものについては、建築年数の制限はありません。③床面積の2分の1以上に相当する部分(商売の方を想定しています)が居住に使用されるものであること。

    非課税の金額は、平成23年分(※)の贈与(なお、平成21年分と22年分は割愛いたします)において、平成22年分で非課税の特例を適用していない場合は1000万円となります。

    ※平成24年税制改正があり、非課税金額は平成24年分は1000万円。平成25年分は700万円。平成26年分は500万円となります。なお、省エネ・耐震の住宅家屋は割愛させていただきます。

    手続きとしまして、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書に計算明細書、戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、受贈者の納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

    以上見てきましたが、この制度自体は自民党の麻生政権の緊急施策として決定しました。「祖父母」の要件を加えたことも意味があったと私は考えています。住宅取得資金の贈与の制度の変遷を見ると、550万円までは非課税制度(父母や祖父母からの要件で基礎控除110万円までの非課税を5年分先取る考え方です。平成17年12月31日を持ちまして廃止となりました。)がありました。この制度にあった祖父母を要件に取り入れるべきだとの意見を踏まえたのではないかと思っています。個人的見解を言うならば、この直系尊属からの住宅取得資金の非課税制度について、非課税額の金額自体に変動はあるかもしれませんが、延長方向で調整は続けられるのではないかと考えています。

    結局、上の世代が抱え込んでいる金融資産をいかに下の世代にスムーズに渡していくかということなのでしょうか

     

    住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算(訂正)

    2012年3月29日

    先日3月25日の上記掲載の件につきまして、訂正をさせて下さい。

    『非課税枠の1,000万円が平成24年分は1,000万円、平成25年分は700万円平成26年分は500万円。省エネ・耐震住宅は割愛させていただきます』と書きました。

    これは、次回説明いたします「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税」のことですが、住宅取得資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例の適用期限が平成26年12月31日までの贈与の3年延長になったことを申し添えいたします。お詫びとともに訂正に代えさせていただきます。

    住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算

    2012年3月25日

    前回の関連で今回は、住宅取得資金の贈与を受けて相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算を具体例で見ていきたいと思います。平成23年に父から4,300万円、母から1,000万円の住宅取得資金の贈与を受け、いずれの贈与についても相続時精算課税を選択した場合を考えて見ましょう。

    相続時精算課税の特別控除額は、選択した贈与者(財産を渡した方)ごとにそれぞれ適用されます。平成23年中の住宅取得資金の贈与(合計所得金額が2,000万円以下である者が受ける贈与に限ります。)については1,000万円まで非課税とする特例がありますので、父からの贈与についてこの特例を初めて適用するものとします。

    (1)父からの贈与・・・課税される金額の計算としまして、4,300万円-1,000万円(非課税金額)-2,500万円(相続時精算課税の特別控除額)=800万円。贈与税額の計算としまして、800万円×20%(相続時精算課税に係る贈与税率)=160万円(贈与税額)。注意点としまして、相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税の基礎控除(110万円)は適用できません。

    (2)母からの贈与・・・課税される金額の計算としまして、1,000万円-1,000万円(相続時精算課税の特別控除額)=0。注意点としまして、住宅取得資金の非課税制度は受贈者(財産をもらった方)1人について1,000万円(※平成23年分に限る。)が限度となっていますので、父からの贈与について非課税制度を適用して1,000万円を非課税とした場合には、母からの贈与については非課税制度の適用を受けることはできません。ただし、母からの贈与の例で言いますと2,500万円の特別控除額は使えますので、2,500万円の枠から1,000万円を引いた残額1,500万円の特別控除額は翌年以降に繰り越して使えます。

    ※平成23年分の非課税枠は1,000万円ですが、平成24年分は1,000万円、平成25年分は700万円、平成26年分は500万円となります。なお、省エネ・耐震住宅の非課税枠はここでは割愛をさせていただきます。

    以上、計算例を見てきましたが、上記の父母2人からのそれぞれの贈与を受ける場合、父から1,000万円の全額を非課税枠として引ききった場合は、母からも二重に引かないよう注意が必要です。裏返して言えば、平成23年分について父から非課税枠500万円を引いて計算しているなら、残り500万円は母からも引いて計算できると言うことです。参考になさって下さい。